▼オバマ大統領が尖閣問題のエスカレートを看過し続けると「重大な誤り」と指摘したのを政府の同時通訳が「正しくない」と訳し、メディアがそのまま報じたと琉球新報が指摘。しかし、政府の同時通訳は「非常に好ましくない過ち」と訳していた。(訂正報道あり)
【琉球新報】 2014/4/27朝刊3面「オバマ氏発言で『誤訳』 日米共同記者会見 日本メディアが報道」
《注意報1》2014/4/28 19:00
《更新》2014/4/29 06:00
《続報》2014/4/30 12:30(琉球新報社の電子版記事が修正されました)
《追記》2014/5/02 07:00(琉球新報朝刊に訂正記事が掲載されました)
【関連】米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?〔読者アンケート実施中〕
《注意報1》2014/4/28 19:00
琉球新報は4月27日付朝刊で、「オバマ氏発言で『誤訳』が独り歩き 日本のメディア」との見出しで、24日の日米首脳の共同記者会見でオバマ大統領が、尖閣諸島問題について「事態をエスカレートさせるのは『重大な誤りだ』」と語った部分について、多くの日本メディアが「正しくない」と訳していたため「誤訳」と指摘されていると報じた。その際、政府の公式の同時通訳が「正しくない」と訳し、メディアがそのまま報じたと指摘。しかし、実際は、政府の同時通訳は「非常に好ましくない過ち」と訳していた。NHKの生中継では「正しくない」と訳して放送されていた。
オバマ大統領は会見で、日中間の尖閣問題に関する記者の質問に答える形で、「私は直接、安倍首相に、日中間で対話や信頼醸成措置を築かないまま、この問題の事態がエスカレートしていくのを看過し続けると深刻な過ちになると伝えた」と発言(訳は日本報道検証機構。英語の発言は後記引用参照)。この発言の「深刻な過ち」(a profound mistake)の部分について、「正しくない」と訳して報じたメディア(産経新聞など)と「大きな過ち」と訳したメディア(朝日新聞など)に分かれていた(コラム=米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?参照)。
□オバマ氏発言で『誤訳』が独り歩き 日本のメディア (琉球新報 2014/4/27)※4月30日午後に日本報道検証機構の指摘を受け、修正されています。修正前の記事は下記のとおり。
27日付琉球新報は、多くのメディアが、政府側の同時通訳が「正しくない」と訳したのを通訳機を通じて確認し、そのまま報じたと説明。しかし、政府が公開した日米共同会見の動画では、オバマ大統領が発した”a profound mistake”を、男性の同時通訳が「非常に好ましくない過ち」と訳していた。内閣府の担当者によると、この動画は外務省が手配した同時通訳が録音されたもので、安倍首相ら政府関係者や会見に出席していた記者も、通訳機を通じて聞いていた。
他方、この日米共同会見はNHKが生中継で放送していたが、NHKの女性の同時通訳がオバマ大統領の問題の発言を「正しくない」と訳していた。多くのメディアが「正しくない」と報じたのは、NHKの同時通訳をそのまま使った可能性がある。
また、琉球新報の記事は、同紙が配信を受けている共同通信も「正しくない」との訳で報じたと伝えた。当機構が共同通信に問い合わせたところ、24日の会見直後の第一報では「正しくない」と訳して配信したものの、24日夜の配信記事では「大きな過ち」と訳していたと回答。実際、共同通信が25日午前にネット上で掲載した会見要旨は「大きな過ち」と訳されていたが、琉球新報は26日付記事(共同通信が配信)でも「正しくない」と訳して報じていた。
琉球新報社は、当機構の取材に対し、当初「記事には自信を持っており、事実誤認はない」と答えていたが、30日、同社編集局担当者より「政府公式の通訳とNHKの通訳を取り違えていた。政府の通訳が『正しくない』と訳したとの部分は事実誤認だった。訂正を行う方向で検討している」との回答があった。琉球新報の記者1名は24日の日米共同会見にも出席していたという。
■オバマ大統領の共同記者会見の発言(一部抜粋) (米ホワイトハウス 2014/4/24)
… at the same time, as I’ve said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China. And we’re going to do everything we can to encourage that diplomatically.
■日米共同記者会見の同時通訳(政府インターネットテレビ) (首相官邸 2014/4/24)※動画23:25ごろから
…同時に総理に言いました。引き続きエスカレーションになってしまうということは、非常に好ましくない過ちになるということ。日中の間で対話や信頼醸成措置を形成すべきだと。我々としてもこれを外交的に奨励したいと思います。…
■日米共同記者会見の同時通訳 (NHK 2014/4/24)
…同時に安倍総理に申し上げましたが、この問題について事態がエスカレートし続けるのは正しくないということです。日本と中国は信頼醸成措置をとるべきでしょう。そしてできるだけのことを外交的に私たちも協力していきたいと思います。…
■共同通信4月25日付「尖閣関連発言要旨」(一部抜粋)
日中が対話や信頼醸成をせず事態がエスカレートするのは、大きな過ちだと安倍首相に伝えた。私たちも外交的にあらゆる協力をする。
(*) 27日付琉球新報の紙面画像を追録し、原報道情報の見出しを修正しました。(2014/4/29 06:00)
(**) 30日、琉球新報社より政府の通訳とNHKの通訳を取り違え、事実誤認があったとの返答があり、追記しました。なお、「正しくない」と訳した26日付琉球新報記事は共同通信の配信記事だったとのことです(記事には共同通信のクレジットは入っていませんでした)。(2014/4/30 12:30追記)
琉球新報のサイトに掲載されていた電子版記事は、30日午後5時までに上書き修正されたことが確認されました。(2014/4/30 17:30追記)
(***) 5月1日付朝刊に訂正記事が掲載されました。(2014/5/2 04:00追記)