外陰部に強いかゆみを生じ、潰瘍や水ぶくれができたり白っぽく変色したりする「硬化性苔癬(こうかせいたいせん)」。閉経後の女性や10歳以下の女児を中心に発症する。デリケートな部分で受診をためらう人も多く、福井大医学部附属病院(福井県永平寺町)は女性医師が対応するなどの取り組みを進めている。長年続いた硬化性苔癬の患者の約5%が皮膚がんになるとみられており、皮膚科の担当医師は一般の人の正しい知識と治療の大切さを訴えている。

 硬化性苔癬は、外部から入った異物を攻撃するために作られた自己抗体が自分自身を攻撃してしまう「自己免疫性疾患」の一つとされ、自己免疫性貧血、白斑、円形脱毛症など他の自己免疫性疾患を合併するケースが多いという。進行すると皮膚の萎縮や硬化、皮膚同士の癒着が起こり、排尿や月経に障害が生じるなど生活の質(QOL)にも影響を与える。

 女性100人のうち0・07~1・7人が罹患するとみられている。その女性の10分の1程度とわずかの割合で男性の陰茎部にも生じ、皮膚の萎縮が進行すると、排尿や性行為などに障害を起こす。特に包茎の人に発生するケースが多いとされている。

 硬化性苔癬は見た目での判断は難しく、皮膚生検で確定診断する。ステロイド外用薬による治療で改善がみられることが多いが、症状が重い場合は免疫抑制剤の外用薬や内服薬の服用を検討することもある。また、症状が改善してからも皮膚がんが出現しないよう、長期間にわたっての経過観察が必要だ。

 デリケートな部分に発症することから受診をためらうケースが多いとみられ、同病院皮膚科では女性医師が中心となって診療に当たっている。木・金曜に外来を担当する宇都宮夏子医師は「硬化性苔癬という病気があることを知ってもらい、診療を通して的確にアドバイスしたい」と話している。

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