水月湖の年縞の実物標本をご覧になる皇太子さま=10月14日、福井県若狭町鳥浜の県年縞博物館

 皇太子さまは10月14日、三方五湖の一つ水月湖の年縞をテーマにした福井県若狭町の県年縞博物館を視察された。化石や遺物の年代測定に活用される、約7万年分の堆積物が45メートルにわたり並んだ館内をじっくり見学し、「世界標準のものさし」としての価値に深く関心を示された。

 皇太子さまは、山根一眞特別館長とともに、壁面と床面に映像を映し出す円柱状の部屋「年縞シアター」に入られた。年縞から分かる過去の気候変動を映像で見られ、「過去の景色を教えてくれるタイムマシン。世界一正確な年代のものさしです」とのナレーションに深くうなずかれていた。

 この後、7万年分の年縞標本を一気に見通せる2階で、研究マネージャーの中川毅立命館大教授の説明を受けられた。標本を解説するパネル展示では、顔を近づけてじっくりご覧になる場面もあり、堆積物の掘削に苦労があったとの説明を聞くと「大変でしたね」とねぎらわれた。中川教授によると、鳥取県の大山や鹿児島県の姶良(あいら)カルデラ由来の火山灰に興味を持たれたほか、山地に生える植物の花粉が堆積物の中にある点などで会話が弾んだという。

 中川教授は「熱心に質問していただいた。とても会話が楽しかった」と感想を話し、山根特別館長は「知的好奇心を刺激する場所として非常に興味を持たれたご様子で、とても良かった」と話していた。

 皇太子さまは博物館に先立ち、敦賀市きらめきスタジアムで、知的障害者のフットベースボールを観戦された。県ソフトボール協会の大下利男副理事長が説明役を務めた。両翼40メートルのグラウンドの大きさや、プレー中でも投手がピッチャーズサークル内でボールを保持した時点で試合が止まる「停止球」など独特なルールを説明した。

 一回表先頭打者が蹴った球がフェンスを越えると、皇太子さまは「今のはホームランですか」と質問。守備で好プレーを見せた際は「胸に当たって浮き上がったボールを捕るとアウトですか」などと積極的に尋ねられた。

 大下副理事長によると終始、ルールに関心をもたれ「奥深いスポーツですね。健常者も楽しみながらできますね。フットベースボールが広がるといいですね」とにこやかに話されたという。

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